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ナムジャイブログ

2011年09月22日

我が家の米

 今年も例年の雨季による洪水で、タイ各地でも予想通り、(この「予想通り」と言うところが、タイの社会である。日本だったら、「予想外の」でしかありえない。)多かれ少なかれ様々な洪水による被害が起きているが、中でも一番深刻なのは、生活の糧である、農作物への被害を被った、タイ全土の農民たちだろう。

 我が家の義母の村にある主人名義の沼地で、義母は鯰やフナの一種、海老などを飼っているのだが、その広大な沼地も、毎年洪水の被害に遭っているので、雨が降る季節になると、毎朝のように、早朝6時ごろ、義母からの電話が鳴る。

 「ハロー、そっちは雨が降ったかい?こっちは昨夜の大雨で、沼の水が流出して、魚が逃げてしまうから、早く○○(主人)に来るように言って!」

・・と、まるでラーメン屋の出前か何かのように、ここから45キロも離れている実家まで、呼びつける。

 昨年までは、この沼地の処理に出掛けて行った主人が一旦戻って来て、もう一度隣の義姉の夫、隣市のもう一人の義姉の夫を連れて、デジカメを持って、再び現地へ集合・・というパターンだった。

 それは、アピシット前首相の政策で、農業者を助けるために、「自然災害で被害を受けた場合に、政府からの給付金が出る・・」というのがあり、その申請のための証拠写真を撮るために出掛けて行くのであった。
 
 これは、その農業に携わっている人、「一人当たりいくら」で給付金が出るので、下手をすると、普通に収穫して出荷するよりも、給付金の方が儲かるという場合もあり、この制度が施行されてから、農民の中には、雨季の激しい時期にあえて作物を植え、被害を待って、給付金を申請するという、この制度を悪用する人もかなりいたらしい。

 とは言え、この人たちには、「悪用する」という自覚はなく、あくまで、「割のいいほうに利用する」という感覚のようである。
だから、うちの店の前などで、客同士が大声で、

 「いや~、今年は雨が多かったから、その時期を狙って米を植えたんだけど、上手い具合に、全部の田んぼが水浸しで、給付金の申請が上手く行ったよ。」

などという自慢話に花を咲かせていたりする。その表情には悪びれた様子など微塵も感じられない。

 
 我が家の主人は、本業は商売なので、実家の方の沼地の給付金申請などは、あくまで実質的に魚の飼育・販売をしている、義母の指示である。
 実際、我が家の裏で趣味でやっている田んぼは、堤防が崩れようが、稲がだめになろうが、どんな被害が出ても自力で処理し、給付金などを当てにはしない。



 ところが、この農民救済のための給付金制度だが、今回のインラック政権への交代で、この制度が使えなくなってしまうという話である。
 これは、あくまで前首相・アピシット氏の政策なので、このインラック政権では、適用されないのだと言う。

 彼女の最大の人気取りの政策は、「最低賃金を全国一律、一日300バーツに引き上げる」だったが、これも発足早々、実行出来るのか、雲行きが怪しくなっている。
 本人も、選挙での公約に対して、ここに来て「技術職に関しては」を付け加えるなど、はっきり言って、幼稚園児の『後出しじゃんけん』の如く、非常に「ずるい」作戦に出た。
 よく、「男に二言はない。」などと言うが、こういう立場の人間なら、「(女であっても)二言はない」にして欲しいものである。


 この政権交代で、一番困ったのは、毎年出ていた給付金を当てにしていた、農民たちではないだろうか?

 普通、農作業での日当は、100バーツから200バーツ程度。
インラック政権の「最低賃金300バーツ」に惹かれて、票を入れたのに、政権を握ったところで、全国一律が困難なことに気づき、「技術職に関しては」と付け加えられて、夢に見た農作業での日当300バーツは花と散った・・・。
 加えて、前政権で保障されていた「農業作物の自然災害による被害のための給付金制度」もなくなってしまった。
農民にしてみれば、「踏んだり蹴ったり」の政権交代だった。

 それぞれの政権に長所短所はあると思うが、今回の政権交代で、農民が直面した問題は、机上の理論ではなく、まさに農民の死活問題である。

 昨年まで、この季節の洪水にも悠々と構えていた農民たちが、今年はそうは言っていられない。
誰も、自分たちの被害を保障してくれないからである。
 自分たちが選んだ政権が、これで良かったのか・・・?今更ながら、頭を抱えている人も少なくないようだ。




 さて、我が家はこの保障制度とは関係なく、主人の暇つぶしに米作をしているが、主人の田んぼも今年の大雨には被害を被り、昨年かなりの投資をし、子供たちも動員して築き上げた自信作の防水堤が、今年の大雨には跡形もなかった・・・。

 これに、意気消沈した主人が、「もうだめだ、今年はこのまま放置して、来年から人に貸そう。」などと言い出したので、私は内心、ほっとした。

 実は、以前は収穫した米は、実家の方に保存して置いて、義母の知り合いの精米所で精米して、義母が夜の暇つぶしに、精米の後始末(混ざった籾殻や小石などを選別して除く)を終えた米を持って来ていたのだが、最近我が家に籾ごと持って来て、この近所で精米するようになった。
 そして、今まで義母がやってくれていた「精米後の後始末」という仕事が増えてしまったのである。

 炊飯をしようと思っても、米を計る前に、まず、この中に混じった「ゴミ」を取り除くのに、30分くらい掛かってしまう。
これを毎回やっていてくれた義母には頭が下がるが、それでも、売っている米なら、ここまで時間が掛からないのにな・・と思わずにはいられない。

 以前、日本の友人が「無洗米」だとか言う、洗わずに、計って水だけ入れればいい・・・という、さすがは「忙しい日本人の発想」というような米が発売されて、使っている・・・という話を聞いたことがある。
 私は、ここまで便利でなくてもいいから、せめて、計って洗うだけで炊ける・・という普通の米が欲しい。

 しかし、今は、せっかく主人が精魂込めて作った米が残っているので、主人の前では、決して愚痴はこぼさず、首と肩の凝りを何気なく表現しながら、せっせと籾殻、小石、草の種を取り除くために睡眠時間を削っている。

 
我が家の米

                     白米とは言い難い我が家の米
 

我が家の米

                     これらが、私を困らせる白米の同居人



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Posted by バットニャオ at 04:18│Comments(11)田舎の生活
この記事へのコメント
へー。この写真、虫ですか?こんなのが混ざっていたんでは、困るわよねぇ。しかし、いろんなことが、あるんですね。毎回、感心しながら、読んでいます。
Posted by ユッキー at 2011年09月22日 07:59
ご無沙汰です。

今回のエントリも非常に面白いですね。
政権交代を農民の視点からみると、そういう意味づけがあるのですね。
災害に対する給付金がアピシット政権の農民に対する大きな補助だったんですね。
悪びれずその制度を使う所が、まあなんといいますかお国柄なんでしょうか。それとも日本でも農村部に行くとそんなものなんでしょうか。

上のユッキーさんも質問されてますが、米の同居人は虫ですか?籾殻や石ではない...ですよね?
Posted by 高田 亨 at 2011年09月22日 08:10
こんにちわ。いつも忙しい中、興味深い話題=実話を有難うございます。  インラック首相になって、さぞかし農民は大喜びだろうなあと思っていたら、そういう影の部分もあり得るんですか!   最低賃金300Bは日系企業にとっては つらいところでしょうが、タイの国が豊かになるためにはねえ。  日本だって昭和49年頃は 給料がどんどん上がって、土地も買えて家も建てられたんだから・・。日タイで知恵を絞りあって原価低減をしていくでしょう。  パットニャオさんの商売も繁盛するのでは?それとも? がんばっ!!
Posted by GJOEY at 2011年09月22日 09:45
こんにちは。

農家の水害対策は、日本国にも同じ様な制度があり、政権が交代しても存続していると思います。
田が水害にあった場合は、市町村役場に書類を提出して、現地調査の後に補助金が交付されています。
農業立国の日本ではこの制度は無くならないと思います。

さて、新政権ですが、発足間もないのにいろいろ話題が尽きませんが、どこかの国の現政権に似ていませんか。掲げた公約を早々と軌道修正するとは。
この「全国で最賃の一律300バーツ引き上げ」ですが、考えて政策立案し、もの申したのか疑問があります。この結果他に与える影響等をよくよく熟考・検討しての公約なのか。ただ、単なる政権欲しさの絵に書いた餅のような気がします。
単純に賃金だけ上げれば、国民の生活が良くなってくる、のかといえばそうではないと思います。賃金上昇が与える影響は最終的には物価上昇への跳ね返りが出てきます。
建築資材の高騰による建売の値上げ、食料品の値上げ、バス料金値上げ、新車の値上げ等々全ての国民生活の、基本的なことへの影響が考えられますので、この国で生活させてもらっています私にも少なからず影響が出てきます。
良く良く考えて政策立案と、実行をしてもらいたいものです。
Posted by 阿羅漢 at 2011年09月22日 12:41
最初に取り除いてから炊く準備に取りかかるよりも、
炊く準備を終えてから取り除く方が効率がいいですよ。
籾殻なんかは米を洗ってる時に半分以上は流れて行くし。
あと精米所変えると意外と改善されたりします。
私も多い時は10分ぐらい籾殻やら小石やらと格闘してます(意外と楽しい)
Posted by 野沢@ウボン at 2011年09月22日 13:41
タイの内情が良く分かって面白いです。(ブログを継続して拝読しているうちに貴国への移住計画もしぼんできました。笑。)

30年前にタイ米を1船買いし、トルコで荷揚げする際、ハッチを開けたら米虫だらけで大損したことを思い出しました。これがその虫の写真なのですね。

「後出しじゃんけん」は政治屋さん、お役人さん、皆そうです。日本では。
Posted by p_tak at 2011年09月22日 22:30
☆ 田舎での食事は米のなかにいろいろ入ってますね。
自家製が多いからなんですかね。
Posted by ピヤポン at 2011年09月23日 07:01
お久しぶりです。
精米機で精米して、洗って炊く・・・それだけで当たり前の様に食べられる日本の米って凄いんですね!?とあらためて感じました。
ウチでの被害と言えば、超多湿な昨年に米虫が爆発的繁殖で大量の米が超不味い米になってしまったくらいで・・・写真の様なのがもし混じって居ようもんならきっと米を食うのを躊躇してしまいそう・・・と、贅沢なコト言ってます(これが当たり前の日本って)
政権交代が農家にとって死活問題になろうとは・・・コレまた何も変わらない日本のソレとは大違い。でも国民の生活が安定する願いはドコでも同じなんですけどね。
それにしてもバットニャオさんは本当に旦那さん想いで気の利く妻でいらっしゃいますね!
Posted by HIDEHIDE at 2011年09月23日 11:11
ユッキーさん、こんにちは!
久しぶりの昼間のコメントです。
米に混ざっているのは、ほとんどは籾殻か、雑草の種、砂程度の小石です。籾殻は、割と見つけやすいので、食べるときにつまんでもいいのですが、ご飯の塊の中に混じっていると、食べた後「ジャリ」という感覚が・・・。その一口は吐き出すことになります。それに、私は良く噛まないので当たらないのですが、小石は堅いので、歯に来るそうで、噛むとそれだけでご飯を食べ続ける機が失せるそうです。なので、慎重に探すのが主婦の仕事になります。

高田さん、こんにちは!
米の混入物の内容は、上記の通りです。
タイ人的には、もらえるものは貰え・・という常識があるし、富める者が貧するものを養うのが当然という理論なので、自分たちが受けるのは当然の権利だとでも言うようですね。

GJOEY さん、こんにちは!
インラック首相になって、日本の反応はいい感じなのでしょうか?
日本の何だかの新聞で、「タイ初の女性首相」、「爽やかな女性首相」だとか書かれていたのを見て、私は「ケッ!」という感じでした。
どう考えても、タクシンの手先にしか見えないし、国に入れないタクシンの身代わり政権のようなのに、何で国民が彼女に投票するのか理解できないからです。他の誰でも大して変わらないけど、これを首相にするのはどうしても考えられませんでした。それを日本の新聞が好評しているのも、「???」という感じ。まあ、日本には被害があるわけではないですからね。所詮他国の目新しい選挙結果だっただけですね。
本人が当選直後に言い訳しているように、「一律300バーツ」はどう見ても実現しなそうですが・・。

阿羅漢さん、こんにちは!
本当に阿羅漢さんのおっしゃるとおりですね。
このインラック女史、何も考えてないのでは?とこんな田舎者の私でも疑いたくなります。
まあ、彼女の場合、タクシンの操り人形のようなものかも知れませんが・・。


野沢@ウボン さん、こんにちは!
「炊く準備を終えてから」というのは、米を計って、洗って水を入れてから・・ということでしょうか?
タイ人式では、目の詰まった広めの竹ザルや大きな盆に広げて探すので水に濡れてからでは出来ないのです。
Posted by バットニャオ at 2011年09月26日 16:35
今日は主人がいなかったので久々に昼間からコメントをしていたのですが、急に客が立て込んで・・・・夜になりました。
続きです・・・。

p_tak さん、こんばんは!
せっかくの移住計画の夢をぶち壊しているようで申し訳ありません。
でも、それを長男に言ったら、「やっぱり・・」という感じで、笑ってましたよ。
私たちが暮らす現地レベルのタイの内情は、「人生晩年の楽園・微笑みの国タイランド」を夢描いている方には、ちょっと厳しいかもしれない・・と。
でも、ここだけがタイではないので、バンコクやチェンマイ、その他の他県などでも日本人向けに、タイの実情とは関係なく暮らせるところが開発されているようなので、まだ夢は捨てないでくださいね。
でも、長男に言わせれば、「日本に居たほうがいいのに。何でタイに来たがるの?」だそうですが・・・。


ピヤポンさん、こんばんは!
そうですね。田舎ではほとんどの家で、自家製か、近所で作った自家製米を購入したりしてますから、精米や、選別作業がどうしても工場産の精白米
とは比較にならないほど、混入物が多いですよね。



HIDEさん、こんばんは!
そうですね。米虫だけなら、米がスカスカで炊き上がりが何となくベタベタした感じになるくらいですが、この混入物は、食べたときに口の中で「ガリっ」とか、「ジャリっ」とかするので、一気に食欲が失せます。
以前は米虫がたくさんいましたが、あれは洗っているうちに流れてしまったり、炊けば死ぬので、それほど気にはしていなかったのですが・・。
確かに、タイにいると日本の「当たり前」がすごく便利だったり、幸せなことだたのに気づくことが多いですね。
Posted by バットニャオ at 2011年09月27日 00:39
更新を見るのが遅くなって、ごめんなさい。
新政権の政策がここまで、行き当たりばったりとはびっくりです。
新首相は自分達の生活レベルしか理解できないのでしょうか?
操り人形だからしかたないのかも!

無洗米はヨーロッパで昔から売られていたような気がします。
日本では、無洗米だからといって価格が高いと言う訳でもないので便利ですよ。
お米の掃除とられる時間をプログに専念して頂きたいですが!
Posted by チャンドラ at 2011年09月29日 14:10
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