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ナムジャイブログ

2010年04月22日

ヤー・バーに対する庶民の感覚

ヤー・バーに対する庶民の感覚


                      義母の家に行く途中の塩田





 昨日、久々に義母の通院と部品の仕入れのために、コラートに行ったときの話である。

 今回は、コラートにカノム・チンの製造機を買いに行くという、義母の知り合いのファイおばさんを乗せて行ったので、私は運転に集中しながら、二人の世間話を聞いていたのだった。


 すると、同じ村でよく顔を合わせているはずなのに、二人は村人の世間話・噂話が弾み、村人の片っ端から話のネタになっていた。

 
 話す前には必ず、「これはあの人(噂の本人)には内緒だよ。知れると向こうが気にするといけないから・・」と前置きをして話し出すのだが、その内容は必ず、回りまわって本人に伝わるのは承知のうえである。
 それなのに、こういう前置きをするのは、「自分は意図的に噂話や悪口を言っているのではない」という言い訳に過ぎないのだが、こういう前置きをしておくことで、責任逃れが出来るという暗黙の了解である。


 話の内容は、大体、本人に面と向かっては言えないようなもので、「誰それが、金を借りて行ったのに、返済どころか、利息も持って来やしない。そうしたら、つい最近になって、『小さい魚を捕まえたから・・』と持ってきたけど、そんな雑魚持ってくるくらいなら、さっさと金を返して欲しい・・・・。」などという話である。
話す方はこの話が当の本人に伝わることを、意図して話すのである。


 ところで、今回、私が少し感動した話がある。

 それは、以前、義母の家の裏に間借りしていて、親戚同様の付き合いのあった一家の、主人より何歳か年下の息子がいるのだが、彼がヤー・バー(タイで有名な覚せい剤の一種)をやっていて、最近頻繁に服用している・・・という話を、義母のところに来たときに、義母に話したらしい。
 私は「普通、そういうことは大きな声で言っていいのか?」と思ったのだが、この田舎では、村中が知り合いで、どこの誰が何をした・・という話は一晩で村中に知れ渡るので、そういうことも隠し事にならないらしい。

 義母の話では、彼は、毎日2~5錠ほどのヤー・バーを服用しているそうで、1錠が500バーツで取引されているという。 

 私は、「何でヤー・バーを飲むの?中毒だから?」と聞くと、
義母は「いや、飲むと活力が湧くらしい。」ということ。

 私は「まあ、そりゃ『覚せい剤』って言うくらいだからな・・。」とピントのずれた答えに何となく納得。

 彼は、父親の修理工場を継いで自動車やオートバイの修理をしているのだが、私も十年くらい前には、一緒に酒を飲んだりしたこともある。
若くして、彼女との間に子供も出来て、今その子も10歳くらいになっているだろう。
今は、再婚しているらしいが、最近は顔を合わすこともないので、今、どういう風貌になっているのかも知らない。

 
 それにしても、エイズに関してもそうだが、タイの庶民の感覚と、我々が持つ感覚はだいぶ差があるような気がする。
タイの庶民は、隣人がヤー・バーをやっていても、エイズになったとかいう話を聞いても、ごく日常的に捉えるようなところがある。
個人の自由。自分は自分、人は人か・・・。



 このヤー・バー中毒の彼に、義母が言った言葉は、

 「お前も、ヤー・バーなんかやってないで、もう少し、家族のことを考えたらどうだ。ヤー・バーは一粒で500バーツもするんだろう。二粒で1000バーツ。そのお金を貯めておいて、月に一回でも両親にデカイ海老の一つでも食わせてやったらどうだ。うちの息子の〇〇(主人の名前)なんか、毎週のように嫁や孫たちを連れて私のところへ来て、おかずを買って持って来て一緒に食事したり、レストランに連れて行って食事をご馳走したりしてくれる。ヤー・バーなんかに掛けるお金をそういう風に使って、育ててくれた両親を大事にしようとは思わないのか?」である。

 まあヤー・バー中毒になっている彼は、義母の言葉くらいではそうそう更正出来るとは思えないが、この義母の言葉を聞いた私は、思わぬ義母の心の内を聞いて、感動して、運転しながら目が潤んでしまった。

 実は、前にこのブログでも愚痴を書いたような気がするが、この毎週のような義母との夕食を、「毎週、毎週、面倒くさいな・・・せめて月に2回くらいだったら・・・」と思ってしまうこともあった。
 これは子供たちも一緒で、朝から晩まで働いたら、早く自分の部屋で好きな時間を過ごしたい・・・と思っているのは私だけではなかった。
 
 でも、この義母の言葉を聞いて、義母が主人の行動を心から喜んでいて、自慢に思っているということを改めて感じ、これからは私も義母との食事を大切にしたいと思えた。

 そして、この話を聞いてもっとも喜ぶはずの主人に帰宅後、さっそくその話を伝えた。
照れ屋の主人なので、怒ったような無関心な顔をして黙って聞いていたが、多分内心は嬉しかったと思う。

 そうして、これが、義母の意図したところだったかも?という気にもなった。
義母は面と向かって言えない感謝の気持ちを、私に伝えさせたのかも知れなかった。

 タイ人のこの噂話の伝達の構造に慣れるまで、ずいぶん長い年月が過ぎたものだと改めて感じた。




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Posted by バットニャオ at 02:28│Comments(11)近所の人々
この記事へのコメント
今日は。
いや-さすが「義母」さん。参りました。
亀の甲より年の功。ん-さすが、できます。義母さん。
義母さんを大切にしてください。
Posted by 阿羅漢 at 2010年04月22日 12:41
義母さんはあなたを通してご主人に気持ちを伝えたかったのですね。       私も親の子、なんだか胸に来るものがありました。                  ヤー・バー、困ったもんですが浸透しちゃいましたね。                深夜のガソリンスタンドで、要らないかと声をかけられたことがあります。
Posted by khao at 2010年04月22日 18:03
本当に「飲むと元気になる。眠気が取れる」とかいう軽い気持ちで、長距離運転手や、工場の夜勤労働者が覚せい剤を摂取してしまうらしいんですが、それにしても最低賃金が1日150バーツ程度の国で、1錠300~500バーツの薬を毎日買えるという経済の構造が私には良く分かりません(アユタヤあたりでは1錠300バーツだそうです。イサーンの方が高いんですね)。

麻薬類については、なぜか日本の法律が他国に比べると異常にゆるく、芸能人なんか捕まっては釈放されていますが、これはこの覚せい剤などが、戦時中に軍人に対して利用されていたという背景があるらしいです。

と、ヘンな方に話が行ってしまいましたが…お義母さんのお言葉うれしいですね!きっとご主人に対してはバットニャオさんのことを「いい嫁だ」と言われているんじゃないかと思います。今後の日曜の夕食が、一層楽しいものになるようにお祈りしています。
しかし、毎週日曜にお義母さんと一緒の夕食を継続されているご主人、優しいですね…
Posted by NAPPY at 2010年04月24日 07:45
はじめまして。数週間前まで、コンケンの辺境で出家生活を送っていたTiaと申します。毎回の更新、大変楽しみに拝読させていただいております。

タイ人にとって、「これ、絶対に内緒だよ」は、「こっそり誰かに教えてもいいよ」と同じなんでしょうね。笑 以前は、タイ人特有のコミュニケーション方法を理解できませんでしたが、最近になってようやっと、徐々にわかってきたような気がします。狭い領域で生きながらも、お互いのテリトリー/リズムを尊重しているような気がします。(度を超えた内政干渉もありますが。)その空気に慣れてしまうと、これまで不快に思っていたことが、案外大したことないんだと思えてしまうから不思議です。

パットニャオさんのご近所は、やはり”赤組”が多いですか?
Posted by Tia at 2010年04月24日 14:35
☆ 覚せい剤についての認識は低いのですね。
毎週夕食を母親にごちそうしていれば、ヤーバ中毒でもいいと思われるのかもと、ちょっと心配になってきました。
Posted by ピヤポン at 2010年04月24日 19:33
うちの親戚もヤーバーの話をしますね。
やっているらしい親戚も二人ほど。

イサーンでもごく普通の中学生が売人をやっていたり
警察が押収物のヤーバーを流していたりしますし
実際には売人でなければ刑罰をうけないので
犯罪意識は薄そうですね。

高校生が、試験勉強を一夜漬けでする時に
眠気覚ましにヤーバーをやるようですから。

エイズも同様で、普通にHIV感染者の同級生が村を歩いてたりしますね。
周囲の人と普通に話をしています。

ヤーバー常用者やHIV感染者は、あまりに日常過ぎて
もうみんなあまり気にしないのだと思います。
Posted by 高田亨 at 2010年04月25日 16:07
昔その薬のことを、友達が「みんな簡単に飲んでる。錠剤だよ」って言ってました。
気分がハイになるらしいですネ。
タイでは「簡単に」というのが、怖いですけど、、、!

何年か過ぎて義母さんと気持ちが通じたこと、良かったですネ。
すぎた嫁を大切にしてもらってくださいませ。
Posted by チャンドラ at 2010年04月30日 23:08
親戚関係の用事でしばらく離れていました。
コメントの返事遅れて申し訳ありません。

阿羅漢さん、こんばんは!
そうですね。義母は、いろいろやりすぎることもありますが、その懐の広さは尊敬しています。

khaoさん、こんばんは!
本当に気軽に服用できるヤーバーは困ったものです。
そして、ヤーバーを売買すると巨額な富が簡単に手に入るという発想も困りものです。
スタンドで声を掛けられるのも・・・怖いですね。


NAPPYさん、こんばんは!
そうですね~、日当が100バーツくらいの地域なのに、何で1000(500×2で)バーツのヤーバーが買えるのか?それは、やはり、後先考えない借金の賜物でしょう。
家でも土地でも女房でも入れて、借金をするようですから・・・。

夕食の件は、今まで面倒くさいだけだったのが、少し気持ちを込めて行ける様になりました。


Tiaさん、はじめまして、こんばんは!
コンケーンの辺境とはどちらのお寺ですか?
ちょうど、甥が最近まで出家していて、コンケーンのお寺にも行っていたものですから・・・。
今は、タイにおられるのですか?それとも日本?
これからも宜しくお願いします。


ピヤポンさん、こんばんは!
いや、「覚せい剤に対する認識」は幼稚園児でも知っていますから、高いのではないかと・・・。
だって、子供たちでさえ、大人の受け売りで「ねえねえ!あの家はヤーバー(の売買)で建てたんだって!」なんて世間話しますからね。



高田享さん、こんばんは!
そうですね、うちの長男の中学の同級生もヤーバー売ってる子も何人かいるそうです。
自然に社会に浸透しているのが怖いですね。
エイズの方は、タイの差別のない(内心はあるが、極端に敬遠したりしない)ところがいいと思いますが・・。
他の病気(癌とか糖尿だとか)と変わらない感覚ですね。


チャンドラさん、こんばんは!
そうなんですよね。気軽に飲める錠剤だから、酒類よりも性質が悪い・・。
注射器とか、面倒な器具が必要ないのもこまりものです。
お友達はやっていないのでしょうね?
出来ない嫁なので、義母に世話ばかり掛けてしまっている私です。
Posted by バットニャオ at 2010年05月02日 03:44
初めまして、バットニャオさん。
時々HP覗いていました。本日初コメントさせてもらいます。私もタイ人と結婚して現在バンコクで生活中です。田舎の生活にポンと思い切って飛び込んだバットニャオさんの驚きました。

田舎ではきっとヤーバーなんて本当に気軽というか何も考えずに手を出してしまうんでしょうね。元気になれる薬という感覚でしょうか?警察と面識があると法を犯していても見逃してもらえるというところも関係しているのではないでしょうか。

バットニャオさんがお義母さんとの毎週の食事を面倒くさいと思っていたけれどもお義母さんからの思わぬ感謝の気持をきき感動したなんて、なんかいい話だなあと思ってしまいました。旦那さんも喜んでいたことでしょう。こういう話は直接聞くより、他の人から聞かされるほうが二倍も三倍も嬉しいのではないですか?
Posted by 豚子 at 2010年05月05日 13:48
豚子さん、はじめまして!

バンコクの生活は長いのですか?
我が家は主人が田舎の人間で、「田舎が最高!」が信条ですので、日本で暮らすか・・という話も出たことはありましたが、バンコクで暮らす・・という選択肢はありえませんでした。
もし、田舎暮らしを拒否すれば、「離婚」になっていたでしょうし、子供たちのためにもそれは出来ませんでした。
 私自身は、バンコクの生活を羨ましく思うこともあります。
タイにいながら、日本の便利さも味わえるという意味で・・・。
 でも、最近は田舎ののんびり生活が当たり前になってきて、バンコクでは暮らしていけそうもありません。
 ヤーバーは、田舎でもこうなのですから、バンコクなどの地方出身者の集まるところには蔓延していると思います。
バンコクの労働者は、田舎の労働者以上に現金収入も多いですから。
あ、何だか長いコメントの返事になってしまいましたね。
これからもよろしくお願いします。
Posted by バットニャオ at 2010年05月06日 02:21
ちなみにヤーバーは飲みはしないです。
不純物だらけの薬品なので飲んでたら麻薬成分より不純物の毒で体がやられるとか。
服用者は改造ライターをもってる確率が高いです。
警察がチェックするときのポイントもそこなのだとか。
Posted by 高田 at 2010年05月06日 07:57
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